《MUMEI》

さらに浮かびあがってくる別のイメージ。
あれは普段と何の変わりも無い、いつも通りに学校を終えて帰宅した日の事だった。
アパートのドアを開けて玄関口を見ると、あの男の靴があった。
「ただいま」の声が喉奥で止まる。
奥の寝室の襖が半分ほど開き、そこから二人の人間の揉み合う音と、押し殺したような息づかいが聞こえてくる。
外から帰って来たばかりで視界の順応していない須佐男は、薄暗闇に目を凝らした。
仰向けになった母優子に覆いかぶさるように・・・・名前の思い出せないアイツ・・・・右耳に金色のピアスをしたあの男がのしかかっていた。
母の黒いセーターが胸の上までまくり上げられて、白い豊かな乳房が露出している。
「須佐男が帰って来る・・・・」
小声で抗議する母の声も聞こえていないように、あいつは乳房の根元を絞るよう に握りしめると、先端でふるふるとおののく薄暮れ色の乳頭をなめ上げた。
「研究の虫の博士じゃ、こんな楽しみは教えてくれなかっただろ?」

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