《MUMEI》
帰り道
  〜江上視点〜


懐かしい声で

香奈が私の名前を呼ぶ。

ただ名前を呼ばれただけなのに

私の心は

春のひだまりみたいに

暖かくなった。


私と香奈は、歩き出した。

校舎を出て

校門を過ぎた頃

香奈が口を開いた。

「話って何・・・?

私の話は、あとで話すから。」

私は、頷き

歩きながら話始めた。

「最初にね、

私、香奈にもう1度謝っときたくて・・・。

あの時・・・

私そんなつもりなかったけど

でも結果香奈を傷つけることになって

ごめんなさい。」

そこで一旦言葉を切って

香奈を見た。

香奈は、黙って私を見ていた。

しかし、その目は

潤んでいた。

そして私は話を続ける。

「あとね、私

・・・好きな人がいるの!」

そう言って

香奈の反応が怖くて

ぎゅっと目を瞑ってしまった。

まだ好きな人が西村くんだと

言ってないからか

香奈はなにも言わなかった。

私は、瞑った目を

そっと開けて

香奈を見る。

香奈は、私が想像していたような顔は

していなかった。


何となく、切ないそんな感じの顔をしていた。

でも私と目が合うと

顔を背け

また真剣な顔で

私の顔を見た。

だから私は続ける。

「その好きな人って

言うのが





・・・・・西村くんなの。」

今度は、香奈から目を逸らさず言う。

香奈は、また切ない顔をして

しかし強気に言った。

「何でそんなこと

私に言うの?

関係ないじゃない。

好きなら勝手に

言えばいいじゃない!

それとも

私への当てつけのつもり?」

私は、何も言えなかった。

そんなつもりじゃないのに。

すると香奈が口を開いた。

「何?

言いたいことが

あるなら言えば?

言わなきゃ分からないよ!

瑠衣はいっつも

そうだよね。

あの時だって

瑠衣は悪くないのに

謝って

私から離れていったよね?」

香奈は、そう言いながら

涙をぽろぽろ流していた。

私は、その言葉と涙から

香奈の私に対する愛情や

今まで香奈が抱えてきた苦しみに

気が付いた。


私は、涙を堪えながら

ポツリと香奈に謝った。

「香奈。・・・・・ごめんね。」

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