《MUMEI》

「面白いから一生そこで漫才やっててくれ」
三人の間を通り抜けようとする須佐男の肩を、
「おい待てよ!」
頭一つ分は大きい少年が、がっしりと掴む。
「どけよ・・・・」須佐男がギロリと
大柄な少年を見た。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「ひいっ!」
その視線の圧力に大柄な少年が、突然
爆弾にでも触れたように飛び下がる。
「群れなきゃ何も出来ないカス野郎め・・・・」
トイレの外に出ると、やくざ顔のわりに人の良い体育教師が、須佐男と入れ違いにトイレに入って来るところだった。
「おう須佐男。病気のほうはもう大丈夫なのか?」
「はい。そう言えば、三組の子達がトイレのドアを壊しちゃったみたいです」
「何をーーー!!」
須佐男が廊下を歩き出すと、トイレのほうからちょっとした騒ぎが持ち上がるのが聞こえてきた。
「黒沢!内藤!お前ら、なんちゅう事をしとんのじゃーー!!」
「い・・・・いや!これは違います!」
「言い訳無用!!お前ら現行犯じゃ!
すぐに職員室へ来ーーい!!」
体育教師の怒鳴り声と、半泣きの三人組の声を後ろにして、須佐男は校門で待つ鈴木かなえと田町雅の元へ向かう。


「どうかした?」
「何か顔色が悪いぞ」
尋ねる二人に
「ん・・・・何でも無い」
と答えて、夕焼けを背に今や黒い影と化している校舎を振り返った 。
こうして見ていると、この校舎もあの黒い小山のように崩れて消えさってしまうのでは無いか?
そんな想像に襲われる。
それにしても、あの時自分の中を確かに通り過ぎていった・・・・あの『力』は
何だったのか?
壊神Z・・・・いや、あれはそんな陳腐なテレビの変身ヒーローなんてものじゃ無い。
もっと大きな何かだ。
『あれ』は存在していた。
須佐男は自分の周囲の日常が変質し始めるのを、今や確実に感じていた。

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