《MUMEI》
二月◇日(雨)
仕事が終わらない。今回の駄目出しで何度目だろうか。この間から、完全にどこかの迷宮を彷徨っている。巷では、最年少や最高齢の人物が認められて、脚光を浴びた。文学賞をこの手に、とは言わないが、いつかあったらいいね、とは思う。宝くじは買わなければ当たらない。あらゆる文章も書かなければ読まれることはない。最近、禁煙している。ここ数日の仕事中、無性に吸いたくなる。テレビ番組だったか、相撲取りの禁煙エピソードが放送されていた。禁煙したら横綱になれる、と先輩力士に二人の幕下力士が助言され、一人は禁煙して見事、横綱となった。もう一人は禁煙するくらいなら横綱にならなくていいと宣言し、関脇止まりだったという。その意気や良し。力士も煙草を吸うんだなとその時は呑気な僕だった。だからと言って何でも適用できる訳ではなかろう。何か刺激物を、と。挽肉とニラを別に、たっぷりと混ぜ込んだ市販の麻婆豆腐の素を豆腐に絡める。素だけだと具が豆腐だけで物足りないのだが、単純に足しただけ量が増える。分量が増えただけ、味が薄まって辛味は減るのだけど。辛いものが苦手な三毛には丁度いいかもしれない。丼飯に挽肉ニラ増量の麻婆豆腐を山盛り。やはり香辛料の香りは食欲を誘う。あっという間に相当量を完食した。三毛にも食べさせてやりたかったなと思ったら、我慢できなくなる。食後の一服。便器にしゃがんだまま、煙草に火をつける。完全なる確信犯である。一口吸い込んで、拍子抜けした。久方ぶりだったのに、あまり旨くない。一口二口吹かしてから諦めて、すぐに消してしまった。

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