《MUMEI》

君の戸口に立って月の光のセレナーデ
を歌おう♪
六月の宵に君の手の感触を待ち望んで
僕はたたずんでいる♪
バラの花も月の光のセレナーデを
ささやいているようだ♪
明るく輝く星の光が今夜は僕を
夢見心地に誘う♪


甘い調べに誘われるように、
「さぁ姫よ!お手を拝借♪」
「ホントに嫌ですよ、あなたったら!」
「いいから、さあ!」
おどけ顔の父が母の手を取ると、母はその懐でクルリと回り、クスクス笑い出す。
途端に畳み敷の六畳の部屋で、ダンスが始まる。
父と母があはは、うふふと踊りながら
笑い出す。
須佐男は「うひひ」と変な笑い声を上げ、靴を蹴り捨てながら部屋に飛びこんだ。
踊る進一郎と優子の周囲を、まるで太陽の周りを周回する惑星のように、
マイケルジャクソンのムーンウォークの真似をして巡り始める。


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