《MUMEI》
異変
「全然寝れなかった・・・・・・」

今宵はベットからむくっと起き上がると、ぼそっと呟いた。

昨日の出来事から一夜明けた今日の朝。

コンディションは最悪だった。

「・・・・・・歩雪くんがあんなことするから寝れなかったじゃん」

今宵は昨日の歩雪を思い出すとむすっと剥れた。

いつも歩雪のことがふと思い浮かぶが、今は別の意味で頭の中を支配している。

「あーもうっ。早く起きよ!!」

いらないことばっか考えちゃうし。

今宵は着替えを済ますと部屋を出た。




「おはよー!!・・・・・・っていないの?お母さん」

今宵は見渡しても姿が見えない母に首を傾げる。

出かけたのかな?

きっとスーパーの安売りだね、うん。

1人納得すると、テーブルに置いてあるメモ用紙と目が合った。

「なんだぁ?」

今宵はテーブルに近づき、見慣れた母の筆跡で書かれている短いメモを手にとる。

大方どこのスーパーであるかが書いてあるのだろう。

「えーっと・・・・・・何々?」

そして内容を読み取ろうと文字に目を走らせたその瞬間。


ガターンッ、とその場にふさわしくない音が響き渡る。


「な、何これ・・・・・・」

気持ち悪い。

その音の正体は、今宵の体が床に打ち付けられたものだった。

その反動で今宵の手から落ちたメモの文字が渦を描いているように見える。

今宵は額に手を当てて静かに呼吸をする。

何で・・・・・・?

またあの時と同じ感じ・・・・・・ううん。

昨日より酷い。

今宵が感じていたのは強いだるさと貧血。

しばらくの間今宵の息苦しい息遣いが部屋に響いたが、それは突然やんだ。

「・・・・・・治った」

もう気持ち悪くないし、ボーっとしない。

今宵は先ほどのは嘘かのように症状はおさまっていた。

ホントに何だったんだろ、さっきの?

「ただいまー」

玄関先で加奈子の声がする。

「あ、おかえりー!!!」

さっきのは黙っとこ。

変に心配させたくないし。

今宵は先ほどの出来事を胸にしまい、加奈子に明るく答えた。

―ここが運命を変える最後の砦であったのかもしれないが、もう。

『手遅れ』

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