《MUMEI》

闇の中をそれに溶け込むように、
顔面を黒い顔料で染め、漆黒のマントをまとった虎ノ介が疾駆する。


ドス!バキ!ズバッ!


まるで大根を刃物で叩き斬るような音が、続けざまに起きる。
行く手に立ち塞がるゾンビ達の、
斬り飛ばされた頭、腕、胴体などの肉体のパーツがたちまち宙を舞い、虎ノ介が走り過ぎた後には屍の山が築かれた。
背後から迫る虎ノ介の存在に気付き、
銃口を向けようとしたゾンビ兵も、狙いを定める間も無く、その銃ごとオリハルコンの大剣で叩き斬られる。
ララの超感覚が捉えたのは、自分たちのコンテナに向かって真っ直ぐ突き進んで来る、その虎ノ介が放つ『殺気』であった。
ララの超感覚の目には、戦鬼と化した
虎ノ介が『人』ではなく、漆黒の体毛を持つ血に飢えた狂暴な虎そのものに見えた。
虎の牙や爪が闇に閃き、
その突進を受けた骸骨の兵隊達が、
次々とバラバラに砕け散っていく。
その両眼は血のように赤く輝いている。
漆黒の虎は「ぐるるる・・・・」と喉を鳴らし、この殺戮を楽しんでいるようにさえ見えた。
敬虔なキリスト教の教えの中で育った
ララにとり、それは悪魔的な存在にさえ思えた。
後方の混乱に気付いたゾンビ兵達が、
「虎ノ介」という新たな敵の存在を認識して陣形を立て直した時には、北面から進行していた第三中隊の三分の二が全滅していた。
すなわち百数十名の兵隊が、わずか
数十分のうちに損耗した事になる。

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