《MUMEI》
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あれから一週間が過ぎた。
姉は部屋に引きこもり、ほとんど出て来なくなった。
文芸部は一人欠けた状態ながらも、いつも通りの活動を続けていた。

「ん…」
窓から差し込む日差しに目を覚ます。
枕元の時計を見ると十一時。
私としては珍しく、寝坊したようだった。
「ごめん、お姉ちゃん
寝坊しちゃった」
姉の部屋の前で声を掛ける。
この一週間ですっかり習慣になってしまった。
しかし、姉から返事は無い。
「開けるよ…?」
ガチャッ
鍵はかかっていない。
姉はいなかった。
「出掛けたのかな?」
だとすれば、少しは落ち着いたのかもしれない。
ご飯を作って待つことにしよう。

十二時を少し過ぎた頃、「ただいまー」と声がした。
姉が帰って来たようだ。
玄関に迎えに出る。
「お帰りなさい、お姉ちゃん
…って、その格好どうしたの?」
姉は何故か冬制服のブレザーを着ていた。
「なんだか、寒くって…」
「…大丈夫?」
私が心配そうに訊くと、姉はニコリと笑って頷いた。
「ボクは大丈夫、心配しないで」
少し、安心した。
「そんなことより、お腹減った」
「うん、ご飯にしよっか」

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