《MUMEI》

ただちに第三中隊から、第一〜第四中隊へ応援を要請する無線連絡が飛び、互いの間で交信が飛び交う。
(しかし実際のところ無線は当の昔に
故障して、彼らはテレパシーによる意思の交信を行っていたのだが、彼らの腐りゆく脳髄はその事にすら気付いてはいなかった)
だがその時点で、突然虎ノ介の存在は
痕跡を絶った。
まるで煙のごとく消えてしまったのだ。
ゾンビ間のテレパシー交信が次に
虎ノ介の存在を捉えたのは、北面とは
真逆の南面を固める、第一中隊からの
混乱と阿鼻叫喚の思念波 だった。
『突然ヤツは我々中隊の真ん中に現れた!只今交戦中!動きが速く標的が捉えられない!パニックに陥った味方どうしの同士討ちによる被害も、現在広がっている!や・・・・ヤツは、まるで動きまわる闇だーー!』
そう叫ぶ思念波が、次の瞬間には消失する。
ララもまたその思念波の交信と、虎ノ介の不可解な動きを捉えていた。
殺戮を撒き散らす黒い虎が、まるで空間移動でもしたかのように突然消えて、
また別の場所に出現した。
悪魔のような、超常的な存在のごとく。
ララの超感覚でさえ、虎ノ介の動きは
そのようにしか感じられなかった。
(あなたは一体・・・・何者?)

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