《MUMEI》

確実に迫って来る黒い虎のイメージが、
ララの心に怖れだけでは無い、得体の知れない感情を呼び覚ます。
ときめきに似た胸の高鳴り・・・・。
不意に下半身に電気でも走り抜けたようなうずきが貫いて、ララは思わずあえぎを漏らした。
知らず知らずのうちに、太ももをきつく擦り合わせている。
それはまだ女になる以前の目覚め始めた官能が、ごく自然に覚えさせた秘密の楽しみだった。
夜、父と義母の部屋から時々聞こえて来る押し殺したようなあえぎ声に火をつけられて、少女が自慰を覚えたとしても、
生身の人間なら誰でも責められる事では無いだろう。
だが背徳的な喜びを感じた後には、必ず
罪悪感がララの心を責め苛んだ。
その時の抑えきれない官能のうずきが、
今この瞬間ララの肉体に、前触れも無くとりついてしまっていた。
あえぎを漏らし茫−ぼう−っとする腕の中のララを見咎めて、
「どうしたの?ララちゃん?」
義母のマレーナが優しく尋ねる。
ララははっ!とすると顔を真っ赤にして、
「えっ?!何でも無いわ!」
慌てて誤魔化した。
「大丈夫よ。きっとお父さまが守ってくれるわ」
マレーナが柔らかな胸にララを抱き寄せて言う。
だがララは余りにも虎ノ介の存在に気をとられていた為に、肝心の急迫している危機には気付いていなかったのだ。


ギャルルルルルルル・・・・・・・・
!!!!!!!!!!!!!!!!!!


あの馬牛たちを捕らえた錨−いかり−に似た武器の発する、空気を引き裂く不快な音が接近し高まると、
次の瞬間凄まじい衝撃がコンテナを襲った。
横転するコンテナの中で、三人の家族の悲鳴がこだました!!

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