《MUMEI》

久しぶりに家族と食べる食事。
センパイは来なくなってしまったけど、嬉しかった。
いつか、また三人で…。
「ねぇ、テレビ点けていいかな?」
「うん、いいよ」
画面の中では、地方局のキャスターが隣町のアパートの火事を中継していた。
「あれって…」
見覚えのある建物に、私は声を漏らす。
「うん、文葉の住んでるアパートだね」
「…大丈夫かな?」
「……っ」
「お姉ちゃん?」
今、何か言ったような…。
「火ってさ、怖いよね」
「…うん」
確かにそうだけど、突然どうしたのだろう。
「本当はね、文葉の死体だけ焼くつもりだったのに…」
――予想より派手な火葬になっちゃった――
そう言った。
「…お姉ちゃんが火を着けたの?」
「そうだよ
えへへ…綺麗でしょ」
今の姉は完全に狂人だった。
でも、私にとっては最後に残った大切な人でもある。
「お姉ちゃん…!」
私は姉を抱き締めた。
「私が、守るから…」
姉は何も言わず、私を強く抱き返した。


夜になった。
姉は私のベッドですやすやと眠っている。
今日は、あれからずっと姉が引っ付いて来たので、私も今すぐにでも眠りたかった。
「おやすみ、お姉ちゃん」
そうして、私は眠りにつくのであった。


夢の中で、私は溺れていた。
息が出来ない、苦しい、意識が遠くなる。
死にたくない。
死にたくない、死にたくない。
死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない。

死にたくない。

すると、急に意識が楽になった。
すうっと、眠りに就くように…。

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