《MUMEI》

虎ノ介の目蓋にいつの間にか、絵の具らしきもので白眼と黒眼が描かれている。
その口からむにゃむにゃと寝言が漏れた。
「スルメ文明の生き残りが東へやって来て、アバラボネ族ですね・・・・お師匠・・・・」
厳しい老人の眼に笑みが浮かんだ。
「ほほほ!こやつ、やはりただ者ではないわ!」
そのまま弟子の居眠りを咎−とが−めず、くるりと背中を向けたかと見るや・
・・・くわっとその目が見開かれ、振り向きざまに、竹刀が凄まじい勢いで振りおろされる。


ガッ!


と弾ける音がして、その竹刀は虎ノ介の右肩数センチの位置で止まっていた。
右目を半分開けた虎ノ介の手には、横向きに竹刀がかかげられている。
竹刀は虎ノ介の傍らに置かれていたものだ。
「寝ていたのでは無かったのか?」
「お師匠の放つ殺気に叩き起こされました・・・・」
老人がにやりと笑うと、虎ノ介もニターッと笑う。その後大あくびをする。
「そうか。『気』が読めるようになったか・・・・」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫