《MUMEI》
前作の続き(早瀬視点)
牟呂と早瀬の続き。

*早瀬視点*


『……っ』

いきなり、キスされて抱き締められた。


『早瀬君は、俺の事好きなんだろ?俺と付き合おうよ。』


…確かに、俺はこの人にずっと片想いしてた。いつかこの人の隣に並んで笑えていたら、どんなに幸せだろうかと…。


…嬉しいはずなのに。
なんでこんなに涙が溢れて来るんだろう…


…幸せなはずなのに。
なんで頭の中に目の前に居るこの人じゃなく、居ない人の顔が浮かぶのだろう…


俺の涙に気付いた彼は、嬉し泣き?なんて笑ってもう一度俺に口付けをして、明日返事聞かせてな?と俺を解放した。



寮への道を、とぼとぼと歩く。見上げた空には、まぁるいお月様。


あぁ、まるで牟呂の様だと思う。太陽の様にギラギラとしてなくて、しんとした闇夜を仄かに照らす。

『……牟呂っ』

名前を呟けば、月が滲んで見えなくなった。


俺は馬鹿だ。今になって自分の気持ちに気付くなんて。

今更、どの面下げて牟呂が好きだ、なんて言えるんだろう。


散々あの人への想いを聞かせて、悩み事聞いて貰って…。



初めは、なんて無愛想な奴だなぁと思った。でも同室になり、言葉少なだけれど、それを補って余りある包み込む優しさを牟呂は持っていると気付いた。

牟呂は感情がない訳じゃない。感情が表\に表\れにくいだけ。同性が好きだ、と言う俺の告白もさらりと受け入れてくれた。

その後も、変わり無く接する態度に安堵したし、信頼出来る友になった。


…まさか、あの人よりも大切な存在になっていたなんて…

…あぁ、俺は嘘がつけない性格だ。ましてや牟呂相手に、嘘をつき続ける自信なんてない…

…牟呂に正直に気持ちを伝えよう。流石に牟呂もドン引きするだろうけど、俺は牟呂に嘘はつきたくないんだ。


玉砕覚悟で、部屋の扉を開いた。


……牟呂は、寝ていた。
時計を見れば、深夜と呼ばれる時間だった。

そっとベッドへ近寄り、寝息を立てる牟呂の顔を暫く眺めていると、胸がキュンとして苦しくなる。

自覚してしまうと、勝手に頬が熱くなり、戸惑ってしまった。

『…………ん、何?』

ヤバい。牟呂を起こしてしまった。



…長くなりそうなんで、勝手に続く。


……………………………

前作で、牟呂が切なくて、あららっと思ってたら作者を無視して、早瀬が動いてしまいました。
次回で終わらせます。

完全なるジコマン。
お目汚し、失礼しました。読んでいただいてありがとうございました。

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