《MUMEI》

――ドラマの共演者の初顔合わせ。








マネージャーとは名ばかりで殆ど関わりのない田中さんと局に入る。





オーディションの時は一人で来た。





あの日は緊張もあったけど隆志との事もあって気合いもやる気も出なかった。






あの日は簡単な質問と台詞の一部を読まされただけ。





周りの奴らがやたら上手かったのが強く印象に残っている…。







「しかしびっくりだねー、一発で決めるなんて才能あるんじゃない?」






田中さんはエレベーターの数字を迷う事なく押す。





田中さんは俺みたいな駆け出しを何人も掛け持ちするマネージャーで、かなりのベテランだ。






40を回ったばかりの小柄で気さくなおじさんである。





「俺もびっくりで…、何で俺なんだろうって一万回位口に出して言っちゃいましたよ…」






エレベーターはあっという間に目的の階に辿りつき、俺達は目的の部屋へと向かった。











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