《MUMEI》
明けおめ
大晦日から、一人だったんだ

物凄く淋しかった

何だろう、こな異様なまでの淋しさは

除夜の鐘を、一人で聞いたんだ

去年の暮れに、兄貴から電話が入ってた
ファクトリーに起きっぱなしの電話に

留守電を聞くと、たまには家に顔を出せと言ってた

けど、行かない

俺、兄貴の嫁さんを犯してるんだぜ
行けないだろよ

善人になろうとしてる
でも、してきたことがね……

元旦の夕方、トウコと待ち合わせてたんだ

道は空いてる

駅前で待つトウコを、抱き締めちゃったんだ

人目があるのに

私も、淋しかったよ

トウコの言葉に涙が出そうになったよ

二人きりになりたかったけど
ヒトミちゃんと、会う約束をしてるんだって

強引に、誘われて、断り切れなかったって

行こう

ごめんね

トウコの友達だろ、気にすんなよ

浮気してないよね?

へ?、一晩だろ、離れてたの…

一人エッチもダメだからね
私が出してあげるんだから

あのねぇ

生理だから、してなかったもん
口でしてあげるって言っても…いいって…

一緒に気持ちよくなりたいじゃん

……うん……

手を握りながら、運転してた

そして、待ち合わせの場所に行くと
ヒトミちゃんと、彼氏がもう来てたんだ

明けおめの挨拶をして
ヒトミちゃんの彼氏のマンションへ

赤い、スポーツカーか、彼氏さん

俺、ハイエース……しかも、バン

高級車がいい?

変な気を使わないで
私ねぇ、見栄張るとこ、変わったの
タクヤが変えたんだよ

トウコ、そう言ってくれたけどさ

あるにはあるんだよね
貰い物のベンツがさ
でも、俺、そんなの乗る身分じゃない

あの、お婆さんの付き添いするときしか、使ってないんだ



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