《MUMEI》

参ったね

ハルキさんが、うつむいたまま、俺を見て言ったんだ

ぁは……強いっす、女は…
俺はそんなに、肯定できないっすよ

そう、答えた俺に

どうして?

トウコが聞いたんだ

……まだ、自分に自信がないから

真顔でトウコに答えたんだ

自分を否定してるの?

それは、したくない、でも、まだ、肯定できない
仕事も中途半端だし、まだ、

タクヤくん、独立開業だろ?
凄いことだと思うけどな

ハルキさん、そう言ったんだ

うん、社長だよね、青年実業家でしょ?

ヒトミちゃんが言ったんだ

誰でも、そんなの出来るよ
ちょっと、チャンスが来ただけだから、
……トウコの事もそうだけど
勝負はこれからだし…
正念場は、まだ先にあるからね

凄いなぁ、タクヤくん
普通満身するもんだぜ
お金だって、無くはないだろ?

有りませんよ、そんなに

その時計、本物だろ?

貰い物です

貰えるのか?!

どうしたの?ハルキ…

ヒトミ………凄いかもよ、タクヤくん
世界に50有るか無いかの時計を、貰えるって……マンション変える時計だよ

マンション買える?!

ヒトミちゃんが、驚いてた

お母さんも言ってたなぁ
タクヤの時計、たぶん、日本に2つしか無いって

そうなの?!

知らないよ、貰ったんだから…でも、
似合ってないよ
早く、似合うようになれってことなのかなぁ?

………普段、してろって、言われたのかい?

なんにも、ただ、時間を確かめる度に、携帯電話見てたら
これ、あげるって……

……凄すぎて、俺にはわかなんねーや

俺自身、わかんねーっすよ…

偽物だったりして

トウコの言葉に

そしたら、嬉しいなぁ

そう答えた俺

…………どうして?

言葉にしてないけど、そう、聞かれた気がした

ハードル、高いよ……

俺、そう、呟いたんだ



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