《MUMEI》

「ハル!」

約束通り駅前の大時計前で俺を待っている少女を呼ぶ。

「カケル、遅刻よ。もう…何回言っても直らないのね。」

「ははは…でも今日はまだ七分しか経ってないだろ?成長したさ。」

「…はぁ……。」

ハルは呆れて言葉も出ない様子だ。

「ほら、行こうぜ。今日はベルゼフ城攻略日だろ?その前に腹ごしらえしないと。」

「………。」


今度は目も合わせてくれない。腕を組み、端正な顔の眉間にはしわが寄っている。

この少女は、俺がゲーム内で知り合った中で唯一の、友達と呼べる人物だ。

ミリオンヘイムオンラインで個人が使うアバターは、初めてゲームをプレイした時に三百六十度から撮った写真を元に作られていて、俺も驚いたが、かなりの酷似度だ。

なので彼女自身も実物と似ている筈なのだが、この少女を実物と言うにはあまりに特殊な格好をしている。

現実世界では滅多に見ない腰元まで伸ばした紅い艶のある髪。
すらりと上品に動く白い手足。
二重と長い睫毛を更に整える血色の良い唇とコロコロと変わる表情。

彼女は、自慢じゃないが十五年と九ヶ月生きてきて一度も告白等されたことがない俺とは、別次元の生き物と思えてならない。

彼女の名は木下 波留。正真正銘の美少女だ。

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