《MUMEI》

ミリオンヘイムオンラインには、様々な職業が存在する。剣士、騎手、探敵手、鍛冶屋、魔導師など、ざっと数えても二十以上はある気がする。

その中でも、料理人は転職可能レベルが異様に高い。料理人と鍛冶屋には手を出すな、と言われる程だ。

俺もこの店主のレベルを聞いて鳥肌が立った。

「…ル!…ケル!……もう!坂上 ショウ!」

いきなり本名を呼ばれ、体がビクッと硬直した。

「…あ、ごめん。全く聞いて無かった。」

「……!」

ハルは一瞬険しい顔になったが、直ぐに気の抜けた顔をした。

「なんか本当に、カケルといると心が広くなるわ。」

「なにおぅ!」

少々納得の出来ない事を言われ、反論しようとした所で、店中がオムライスの香りに包まれていることに気付いた。

「へい、お待ち!」

そう思うが早いか、目の前には湯気のたった香ばしい匂いのオムライスが置かれた。

この量でたったの三百五十ジェル。文句無しだ。

ハルと口論しそうになった事など忘れて、俺はオムライスに見とれた。

ジェルというのは、ミリオンヘイムオンライン内での通貨である。
モンスターを討伐するか、クエストと呼ばれる、サーバーから一定時期に配信されるミッションをクリアし、貯める物で、あまりホイホイ使える物では無いが、今は関係無い。

取り敢えず、この美味そうなオムライスを口の中へかっ込む!

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