《MUMEI》 「待ってって、ハル!」 ハルが遠くに行ったものと思い込み、俺は大袈裟に店の扉を開けた。 しかし、ハルは扉のすぐ横で俺を待ち伏せていた。 「あ、ハル。良かった…まだいた…。」 ホッと安堵の息を吐く。するとハルは疑うような目で俺を見た。 「もうからかいませんか。」 拗ねた様に上目遣いで問われ、俺はごくりと息を呑んだ。 間が空いたからか、ハルはもう一度口を開いた。 「もうからかいませんか!」 「……ハイ…。」 俺は文字通り恐縮すると、ハルは「よし。」とだけ言い、何故か俺の手を引っ張り、歩き出した。 「?」 頭に疑問符を浮かべる俺を見て、ハルは、 「これは仲直りのしるしで、深い意味は無いからね。」 と言った。 なんだか可愛くて、俺はハルに聞こえない位の大きさで、「素直なハル。」と呟いた。 ハルには聞こえなかったようで、俺は深い溜め息を吐いた。 もしも聞かれていたのなら、俺はハルと同じ顔色になっていただろう。 「あ、あの!…義藍騎士団団長のハルさんですよね…?えっと…。」 目の前にいきなり出て来た二人組の少女。あぁ…またか。そう思わざるを得ない状況である。 「あ、はい。ハルです。」 そう聞くと、少女達は「キャー!」と跳びはねあった。 義藍騎士団、というのは、従来のオンラインゲームでも見られるギルド、という制度だ。 ギルドを組む制限は、八人以上、という人数制限以外何も無い。八人以下だとギルド申請は通らずに、パーティ扱いをされる。 全体としては、ギルドよりもパーティの方が多い気がしなくもない。 前へ |次へ |
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