《MUMEI》 「それにしても、凄いですよね!義藍騎士団って有名じゃないですか!そこの団長で、しかも女なんて。」 先程まで上機嫌だったのが嘘の様に、心無しか瞳の色が暗くなった気がした。 「女か男かは関係無いよ。私なんかその為にオンラインしてるって言ってもいい。」 穏やかだが、少し刺々しくなったハルの言葉には、微かな苛立ちを感じた。 ふと、昔の事を思い出した。 初めてハルと会った日。 俺がミリオンヘイムオンラインを始めて、まだ一ヶ月と経たない頃の事だ。 出来るだけ質の高い武器と防具を求めた俺は、毎日直向きにレベル上げを続けていた。 出来るだけ身の丈の合わない、強めのモンスターを好んだ。 エクストラポイントの大幅上昇を狙ったのと、体が、現実には無い浮游感に慣れる事を期待したからだ。 そして狙い通り俺は、戦いの勘や適応力、そして短期間での大幅レベルアップに成功した。 しかし、俺はあまり心の広い人間ではなかった。 見ず知らずの人間と、楽しく会話が出来る程コミュニケーション力も持ち合わせていないし、まず、他人を信用出来ない。 最初はサーバー側が運営していた武器屋やよろず屋も、時が経つにつれ減少していった。 何故ならレベルが上がり、鍛冶屋になれる人間が、少数だが現れたからだ。 それから、俺はクエストで拾った武器でやりくりする様になった。 そしてある日、ハルに出会った。 前へ |次へ |
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