《MUMEI》

「《難攻不落》ってクエスト、知ってますか?」

「………。」

少女の表情は一転し、音もなくこくんと頷いた。

「あのクエスト、一人じゃ勝てなかったんですよ。難易度Uって表示されてるけど、魔物なんかスッゴい強くて。」

俺的にはここ最近で一番頑張った会話だったと思う。

すると少女はその頑張りに答える様に、先程とは比べ物にならないはっきりとした声色で言った。


「難易度Wのボスクラスの魔物二体と難易度X以上の魔方陣を使う魔物一体。」

「…………。」

「あれ?ち、違いました?ごめんなさい…。私もそこで詰まってて…。」

俺が《難攻不落》の話をしだした時に、顔が変わったからまさかとは思ったが、そのまさかだったとは。

「え?いや…俺もそうだと…。」

「あ、良かった…。私、さっきそのクエストに行って返り討ちにされました。ジェルは半分になっちゃうし、回復薬はなくなるし、本当に嫌になる!」

フン、と一度鼻を鳴らし、腕を組んだ。

俺と全く同じ怒りを持っていた様で、少し笑ってしまった。

そして、気が付けば俺は少女を見て、あるまじき事を口走った。


「あのさ。」

「…何?」

「俺と一緒にクエスト行かない?」

いつの間にか消えていた丁寧語は気にもしなかった。

「うん。」

少女は一度瞬きをしてから、確かにそう答えた。

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