《MUMEI》

路地裏を抜けて、二人で武器屋に向かった。

「武器屋ってなんか苦手なんだよな。妙に気前が良くってさ。」

「そう?私は結構使うけどな。日本人が営んでる武器屋なら一軒知ってるよ。行ってみる?この街にあるよ。」

なんだか、コミュニケーション力の部分で負けている気がして、言葉に詰まった。

「あ、あぁ…頑張るよ。」

自信無さげに曖昧な応答を返すと、クスリと笑いが聞こえた。

「カケルってなんか可愛いね。」

予想外の反応に、俺はまた言葉に詰まった。

「可愛いなんて、全然嬉しくないからな。」

「だってなんか……わんこみたい。」

「わんこぉ?」

実に楽しそうに笑っている。

でもなんだか、路地裏に居た時よりも元気が無くなっている。
……いや、元気と言うより、少し緊張感を纏った様な。

「…髪、嫌ならフード被っていいと思うぜ。気になるんだろ?」

出来るだけ小さな声で、しかしハルには聞こえる様に耳元に近付き声を出す。

一度こちらを見たが、すぐに前を見た。

「…私はまだ好きになりきれていないけど、カケルは好きなんでしょう?」

「俺は好き。」

俺の言葉を聞いて、先程までハルを纏っていた緊張感は完全の晴れた。

「なら、いいの。誰かが好きになってくれた物を隠すなんて勿体無いわ。」

その気丈ぶりに、ハルらしさを感じたが、そう感じた事に、俺は心底驚いた。

まだ出会って間もないと言うのに、まるで十年来の親友の様で、俺の人格すらハルに変えられている気がした。

ハルと出会って起きた変化が良いものかは、これから判断していこう。

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