《MUMEI》

そこからは二人で雑談をしながら武器屋を目指した。

雑談をして判った事は、ハルの髪の色が目立っていた事、ハルの頭の回転の速さが異常なまでに速い事、ハルの職業が「剣士」である事。

それから、意外と意地っ張りで、素直な所もあるが、人をよくからかう。それに、かなりの照れ屋であり、普通の十四歳の女の子である、という事。

知れば知るほど、あの時声が重なったのが運命に思えてくる。

実際にその通りなのかもしれない。

初対面の異性にここまで心を許した事は生まれて初めてだった。

この事実に俺は嬉しくなり、珍しく自分の事を沢山話した。

楽しく話していると、あっという間に時間は過ぎ、少々物足りない気持ちで例の武器屋に到着した。

「カナ、久し振り。」

先程まで別の女性を接客していた`カナ´と呼ばれた店主らしき女性が、ハルの声を聞いた直後にこちらを見た。

「うっわぁ、ハル!久し振りだね。今日はどうしたの?」

手際良く品物を客に渡し、長いエスニック調のスカートを綺麗にはためかせ、こちらに近付いた。それと同時に、俺がハルの付き添いだと気付いた様で、俺を覗きこんだ。

「今日は――…あ、この人?」

ハルは言いながら俺をチラリと見て、また`カナ´に向き直った。

「…ハルが誰かと一緒に居るなんて初めてじゃない?それも、男…。」

疑わしそうに瞳を上下に動かしながら俺を隅から隅まで見て言った。

「私もそう思うんだけど…この人は全然嫌じゃないんだ。なんでかは判断しかねるけど。」

「へぇ…。」

少し間が空き、自己紹介のタイミングを窺っていた俺は、すぐに口を出した。

「えと…こんにちは。カケルです。」

取り敢えず名乗って、軽く一礼。

「こんにちは、あと初めまして!私はカナ。ここでちっちゃく武器屋を開かせて貰ってるの。あ、タメ口でいいからね。」

「うん。」

武器屋を営むくらいだから、人付き合いスキルは俺とは比べ物にならないと思ったが、本当に凄い。

一人でこうも話せるなんて、しかもわざわざ人と多く触れあう職業「商人」を選ぶなど、想像もつかない。

それにしても、今日は凄い一日だ。他人とこんなにも話したのはいつ頃か。運を使い果たしそうな気がして少し怖くなってくる。

「えと、今日は武器を新調しに来たの。お勧めの剣とかあったりする?」

沈黙を遮る様に、少し下から口を出す。

「あるけど、ハルのレベルによるなぁ。今いくつなの?」

「十六…かな。」

言いながら、ハルは指輪を付けた左手の中指と親指で器用に音を鳴らす。

この行為は、自分のステータスコマンドを見る為に全プレイヤーが行うものだ。

指輪から若葉色のライトエフェクトが発光し、そこに藍色のデジタル的な英語が浮かび上がる。
隣から覗くと、Lvel 欄にはsixteenの表示が見える。

見終えると、ハルはコマンドを横に一閃し、消去した。

「あー…じゃあ無理かな。お勧めの`怒号灰迅´はレベル二十七じゃないと装備出来ないや。」

「そっかぁ。」

「あ、じゃあ俺それにしよっかな。」

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