《MUMEI》 一対一の会話「富岡も友達に置いてかれたの?」 「一人で来たんです。夜の海が見たくて。」 富岡は小さな足で器用に砂浜を歩いた。 三歩間を取ってついて行く。 この海をずっと知っているように進む。 潮風を受けてはためく衣服と共に飛んでいきそうだ。 「ギャ!」 よそ見はいけない。波際まではみ出していた。 裾が濡れてしまっている。 「ハンカチ使いますか?」 膝丈のスカートから小さいハンカチを出す。 「いいよ、平気平気」 俺なんかにそんな大層なもの使わせるわけにいかない。 「私も少しだけ入ろうかな。」 彼女の指先が湿った砂に入って行く。 前へ |次へ |
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