《MUMEI》

あの時、トウコは自宅にいたんだ

俺の声が聞こえてたんだ

俺を牢屋に入れてやる
そう、父親に言われたそうなんだ

見合いを受け色れろ
そうしたら、俺を自由にさせてやる

父親の言葉に承諾し
朝方、トウコは薬を大量に飲み、自殺した………

母親からの電話で聞いたんだ

トウコは目を覚ましたけど……言葉も、思考も…何もないそうだ

あってあげてもらえますか?

母親に、そう言われた

……携帯電話の電池が切れるまで、
無言だったんだ…

明るく人に接してた
仕事も順調だった

でも、家の電気はつけない

布団で寝ない

………埋まらない、何をどうやっても、埋まらない……

なのに、トウコとの日課のストレッチは、どうしてかな
ひとりぼっちで、真っ暗な部屋の中で、やってたんだ

食事は二人分作ってる
でも、誰も、食べないんだ

誰も居ないのに

行ってきます

必ず、そうやって、言葉にしてるんだ

たまに、ハルキさんとヒトミちゃんと、会ってた

笑顔でね

………突然の目眩で、倒れたんだ

救急車の音…

死ぬのかな、俺……
会えるかな……トウコに



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