《MUMEI》

「ふっ…あはははははは!」

先程まで俺達のやり取りを黙って見ていたカナが、急に爆笑しだした。

「「?」」

ハルと二人揃って頭上に疑問符を浮かべる。

「だってあんたら…なんか新婚みたいなんだもん。夫婦漫才見てるみたい。」

信じられない事を言われ、俺とハルは硬直した。

戸惑いの反応を受けたカナは、続けて漏れた様な声を発する。

「え…付き合ってるんだよね?」

またもや爆弾発言。ハルは顔を赤くして、声も出ない様子だ。

と、その時。

「違いますよぉ!」

さっきまで何処かに行っていた(すっかり忘れていたのは秘密)アイが、俺とハルの間に突如として現れた。

「ア、アイ。」

苦笑いを浮かべ、息を飲む。正直、この空気には耐えられそうになかった。

「そうだ。俺のハルに彼氏なんて出来る訳ないだろ!」

もう一人。

アイと同じ位の大きさで、紺の羽をパタパタと小刻みに羽ばたかせている。

口調と髪型からして、男の子だと思われる。

「アルト。何処に行ってたの?心配したのよ。」

「だって、アイが無理矢理俺の羽を引っ張ったんだもん。」

会話を聞く限り、このやんちゃそうな小人アバターの正体は、ハルの所持精霊だろう。そんなことは容易に想像出来る。


問題はそこでは無い。


「カケル様、只今戻りました!あの…ご免なさい。勝手な行動して…。あっでも、体調管理システムはフル活動してましたよ!」

アイの言い訳は、全く頭に入らなかった。

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