《MUMEI》
止まった時間
佐久間のお婆さんと、暮らしてたんだ

足腰が弱くなっちゃって、不自由そうだったから
身の回りの事を手伝ってたら
そのうち、帰らなくなって……

婆っちゃん、誰もしんようしてないんだな

金目当ての奴等ばかり訪れる

生きてる回りの身内すら、まるで婆っちゃんが死ぬのを待ってるように見えるよ

孤独なんだなぁ

色んな話を聞いたんだ
婆っちゃん、の旦那さん
女好きで、苦労したんだってさ

お金がある人にしかわからない苦労も聞いたよ

世の中なんて、元々嫌いだけど
余計嫌いになるな

そう言えば、トウコも誘拐されたって、話してたよなぁ
身内に誘拐されたんだよなぁ…

……トウコ……

婆っちゃんに、自分のことも話したけど

タクヤの悪さはみんな女だねぇって、笑ってた

確かにそうだけど
悪さの程がね

俺の言葉に笑ってたよ

可愛いもんよ、って

婆っちゃんの旦那さんはもっと酷かったのかなぁ?

……俺、婆っちゃんと暮らしてて
わかったんだ

トウコの大切さって言うか

………何でも、話し合える
善も悪も、共有し、理解し合える

そんな異性に巡り合えることなんか、まず、ないだろうなって
だから、もう、二度と好きになる女なんて、現れないんだろうなって

………コートを着る季節になってた

婆っちゃんの支援のおかげもあり
俺の会社は大きくなってたんだ

婆っちゃんに言われるまま
宅建も、受けた

婆っちゃんが紹介してくれた、税理士さんから、税の事も学んだ

なんのため何て、考えなかったな
婆っちゃんが、喜ぶから

誰かに喜んでもらいたい……

突然婆っちゃんが、息子になっておくれって

養子縁組?

婆っちゃん、俺に、看取られ逝きたいって…

そんなことを言い出したんだ



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