《MUMEI》

簡易裁判所
そこに、ウジ虫どもを集めたんだ

車椅子のユイを、俺が押して入室すると、張り積めた空気が、漂ってた

ユイを、真ん中の位置にさせ、俺はその横に腰かけた

挨拶もなしで本題を切り出した俺は

任意返済を求める、
この場で署名捺印しない者は、即時裁判にする

そう、逆らう者は、資産凍結、財産差し押さえにするんだ

もちろん、返済できない者も居るだろうな

一方的すぎる!

誰かが叫んだんだ

お前たちもそうしたろ?
俺の言葉は結論だ、
しかし、個々に事情も異なるであろう、
必要な出費だったのなら、認める
全て文書で提出してもらう
帳簿もね
税務署の記載と異なれば、脱税になる
すでに、税務署には、裁判所から書状を回してある
嘘偽りは、その場で犯罪として処理させる
期限は一週間だ

横暴だ!

お前たちもな?
違うか

善意でやったことだ!

それを決めるのは俺だ

何様だ!

俺様だよ……その言葉遣い、改めろ!
無礼者が!

静まり返った

弁護士さん、後はよろしくお願い致します

立ち上がり、弁護団に向かって、頭を下げたんだ

弁護士さんたちは、全員立ち上がり
頭を下げてた

あ、あの人、逮捕して!

ユイが、叫んだんだ

な、何を言う、君を案じてだな…

なんで裸にならなきゃいけないの!
言うこと聞かなきゃ、野垂れ死ねって言ったわよね!

逃げ出そうとした、男

刑務官!、取り押さえろ!

俺の言葉に、刑務官が入室してきた

離せ!

公務執行妨害で、逮捕しといてください
ユイ、弁護士さんと警察に行こうね

…はい……

ユイ、必死な思いだったのかな
いっぱいいっぱいって、感じだったな

ただでさえ、人前は苦手だもんな…

頑張ったね

髪を撫で、そう言ったら、涙がこぼれてた

行こうね、ここは、薄汚い奴等ばかりだからさ

車椅子を押したんだ



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