《MUMEI》
佐久間、静香
それは、すっかり冬の気配がしてる日の事だった

平日の昼間、俺は帰宅したんだ

玄関に、見知らぬ女物の靴

………ユイは、入浴中か
俺の知らないヘルパーさんが、来てるようだな…

ソファーに腰掛け、じっと待ってたんだ

脱衣所から、声がした

急いでくださいな、ユイさん

大丈夫です、今日はタクヤさん、遅いはずですから
でも、どうして、会えないんですか?

訳は聞かない約束でしょ?

聞いてた人と、ぜんせん違いますよ、タクヤさん

そうね、

潰された親族も居ますけど、助けるべき人は助けてますもの
静香さんは敵対してた派なんですか?

………仲良くやってるんですね?

ん、そうでもないです
なんでも強引なんだもん……
いつも、喧嘩しちゃいます…

………髪は自分で乾かせるわね?

はい

掃除してきますからね

はい

女性が出てきた、
聞き覚えのある、声の主が

!………タクヤさん……

…………貴女だったんですね……

タクヤさん、帰ってるの?!

車椅子で、ユイが、現れた
髪が濡れたまま……

ユイさん、ごめんなさい、私くしはもう、来れませんは…

そんなぁ、静香さん
親身になってくれるの、静香さんだけなのに!
……………どうして、なんで?
タクヤさん、お願い、静香さんが居ないと困るの!

ユイが、叫んでた

……そう、

立ち上がり

謎が解けましたよ……鍵も電話も持ってるわけだ……
ユイ、静香さんに世話してもらいな

そう伝え、玄関に向かったんだ

お待ちください!
どちらへ、行かれるのですか?

……貴女の顔なんか、見たくもない!

拳が硬くなる……けど、殴ったって…

もう、二度と来ませんから…

ユイは、貴女を必要としてます…
よろしく、お願いします

振り向かず、話した俺に

出ていかれるのですか?!

…………ユイ、裁判はもうすぐ終わる
控訴はしないだろう
そしたら、自分道を歩め
それまで支援する、必要なものは揃えてやる

そう告げ、玄関へ

タクヤさん!

気安く呼ぶなぁ!!

ゴンッ!

壁を、殴ったんだ……

血飛沫が待ってた

………どんな顔をしてたのかな

ユイが、怯えてた……

金なら、いくらでも払う
ユイを、頼みます………

そう告げ、玄関を出たんだ

ベンツのハンドルが、赤く染まる

………家を掃除してたのも、
あの、女だ………

………トウコの、母親だったんだ……

………会いたくもねー!

くそっ………

くそったれが!



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