《MUMEI》
from Miwa & You
笑い合う二人。
想い合う二人。
不幸のどん底にいた二人の邂逅により、二人は、幸福を感じた。
晴れ晴れとした。
励まし合った手紙は、もう無い。


「はじめまして。俺の名前は、星ヶ谷悠真です」
「はじめまして。私の名前は、美樹原美羽です」


この初々しい挨拶から、二人の《情の文通》は必要なくなった事を示している。
何故なら、二人はちゃんと向き合って、想い合って、話せるから。
祝福するように、明るくオルゴールは鳴りだす。
二人の心は、混じり気の無い、大空のように広がった。
そして、繋がった。


二人は不幸だった。
だけれど、二人は笑っている。
乗り越えている。
人間誰もが心に傷を負っている。
それを完全に克服することは、容易いことではない。
この二人も例外などではない。
二人は確かに誰よりも不幸だったのだ。
だが、二人は確かに歩き始めた。
過去に振り返らず、明日を見通して。
これから先、また不幸なことが必ず起きるだろう。
それは避けられない。
生きている限り、確実に訪れる。
だが、それでも二人は前を、明日を諦めないだろう。
繋いだ手を、離すことかない限り。


二人は、ようやく本当の笑顔を浮かべることができた。
明日へ通じる扉は、一歩進めば次々と開かれる。
その扉の先は輝いていて見えないけれど。
見えないから、生きている楽しさがある。
今二人に、不幸かどうか聞いたら―――――
それは愚問だろう。
今の二人なら胸を張って言える。
幸せである、と。

前へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫