《MUMEI》

最後に、寿司を食わせてくれ、な、頼む

断る、出来ることなら、死んでくれ

そう言って、立ち上がったんだ
そしたら、千夏も立ち上がってた

お父さん、私ね、本当に好きになってるの……
私の大切な人を、お父さんが刺したのよ……

千夏……

もう、ピルなんか飲まないわ
貧しくても、あの人と暮らしてくの
………お願い、自首して

千夏がお金を渡してた

千円札と、小銭…

それしか、ないの、もう
お寿司、食べられないと思うけど、なにか美味しいもの、食べてね…

千夏、後生だよ、私達を見捨てないでおくれ

お母さん……絶対、間違ってるよ…
あのときから、ずっとよね?
もう、改めましょう…

千夏……そんな子に、育てた覚えはないわよ

もう、30よ、子供じゃないわ

……おい、酒かって来い
この金で酒買ってこい、そのあと、死ぬしかねー、もう、それしかねーんだよ

あなたぁ、まだ、なんとかなるわ
ね、頑張りましょうよ

もう、ムリだ……千夏…元気でな…

うん、サヨナラでね、お父さん

な、な、なんだと、哀れに思わんのか?!

……一番親身哀れなのは私でしょ!!

千夏が怒鳴ってた…
それに、死ぬ気なんかねーよ、このクソ野郎…

タクヤさん、あの人の所まで、送って頂けますか?
もう、電車賃も、無いんです

………来いよ

ありがとうございます

千夏…俺に頭を下げてたんだ

父親に、サヨナラ、か……
本心かねぇ?……



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