《MUMEI》

「木下君は寂しそうで、怖いくらい切なく遠くを一人で見ていて……どうしてなのか知りたくて、それは好きって言えませんか?

代わりでもいいです。私と付き合って貰えませんか?」
富岡は俺の目線まで背伸びする。女性らしい柔らかな香りがした。


全てが別の次元のものみたいに小さくて芯の強さがある。彼女と目線が合うと恥ずかしくなった。



自分が子供だと思い知らされるからだ。


フッと目の前が暗くなる。知っている、この距離、この吐息、この空白。




「………………ごめっ……」
反射的に富岡から離れた。いつの間にか唇が触れる前に後退している。

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