《MUMEI》

「私こそ。
急にキスしようとしたりして……。

やっぱり水瀬さんが忘れられないんですか?」


「解らない。」


「忘れたくないんですよ。

キスのとき思い出しませんでしたか?」
富岡の両手を持ち上げて立つ補助をする。
引っ張っている筈なのに、突き刺さってゆくみたい。
痛い、痛い、滲みる。





「…………苦しい。」
膝をつく。
砂が温かく掌に散る。


「二郎?」


「内館君!木下君が……」





月は曇っていて見えない。

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