《MUMEI》

一歩進む毎に、歩く速さは増していった。

「間に合うかな。」

「このスピードじゃ間に合わないかもな。」

「…だよね。」

話しながらも、足は速さを増す。

前に一人で洞窟へ向かった時、かなりの距離があり、途中で採取する予定だった薬草を、時間が無く、あえなく断念したのだ。

人混みに隙間が少なくなってくる。

「私もあまり使いたくないんだけど…。」

そこで、ハルがポーチの中を探っている事に気が付いた。

「何探してるんだ?」

「《飛躍の翼》。」

「《飛躍の翼》?それはあくまで飛躍の為のアイテムじゃないのか?」

《飛躍の翼》。ミリオンヘイムオンライン内で数多く存在するアイテムの中でも、安価で手に入るアイテムで、三つセットで売られている。ので、割と誰でも所持している物のひとつ。

が、その用途は飛躍。つまり、平均的なジャンプでは届かない崖や魔物からの逃亡手段等に使われる。
《飛躍の翼》を使えば、相当な高度に到達出来るだろう。しかし、今したい事は高く跳ぶ事では無く、速く着く事なので、関係は無い様に感じる。

「いや、まあそうなんだけどね。ココを使えば、あらゆる万物は変化を遂げるわ。」

言いながら、ハルは頭に人差し指を付け、トントン、と二度軽く叩いた。

俺にはよく解らなかったが、きっと何か策があるのだろう。

そんなことを考えていると、ちょっとした広場に行き着いた。此処はシュデイン公共広場。壁門を越えるとすぐにある広場。つまり、もう壁門はすぐそこにある、ということだ。

「カケル。」

そこで、ハルは立ち止まった。

「どうした?」

つられて俺も立ち止まる。ハルは右手に《洸雅の長剣》を、左手に《飛躍の翼》を握っている。

「私の左腕に掴まってくれる?」

「?」

言われた通りに右手で左腕を掴む。すると、ハルは左手を大きく垂直に振り上げた。

「絶対に離さないでね。」

「まさか…!」

言うが早いか、俺は一瞬で空中に投げ出された。

「うおああああぁぁぁ!」

気が付けば地上は等の果て。俺は右手に力を込めた。

というか、このやんちゃ娘…。跳ぶなら一言言ってくれ。俺の身が持たない。

ハルは隣で笑みを浮かべている。

全く、と思いつつも、釣られて笑ってしまう俺だ。

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