《MUMEI》
2回目
昼下がり、いつもならリビングで加奈子と談笑をしているはずだが、今日は自室に戻ろうとしていた。

今宵が階段を上ろうとしていると、加奈子は気がつき声をかける。

「あら、今宵?部屋に戻るの?おいしいケーキ買ってきたから一緒に食べようと思ったのに」

いつもの日課である娘とのおやつ付き談笑タイムを楽しみにしている加奈子は、いささか不満げに見える。

その姿が友達のように見える母を見て今宵は笑いを零すと、申し訳なさそうに答えた。

「ごめんね!!ちょっと探し物があるんだ!!」

「そう。じゃあ終わったら降りてきてよ?」

「わかったってば!!」

今宵はもう一度母に微笑むと、階段を上がった。

そのまま自室のドアを開け、ベットに雪崩れ込む。

「・・・・・・また、だ」

今宵は先ほど母に見せていた表情とは一変し、顔を青白くして軽く目を閉じている。

今日はもう2回目だよ・・・・・・。

今宵は昼食を食べ終え、母の後片付けを手伝っている時に朝と同じ強いめまいを急に覚えた。

母の前で倒れるわけにはいかない、と必死で堪え、今の状態に陥っているのだった。

どうしてこんな頻繁に
貧血が起こるの?

それに今回のはすぐに治らないし・・・・・・。

「夏バテかなぁ・・・・・・。それとも」

歩雪くんと会ってないから?

今宵はぼんやりとした意識の中、顔を合わせずらい恋人の姿を浮かべる。

毎日のように会ってた
からなぁ。

顔合わせずらいけど、会えないのは辛いね。

「・・・・・・って何惚気発言なんかしちゃってんのかな、私」

これだけ元気だったら心配いらないっつの。

はぁ、と今宵は少しでも楽になるよう額を擦りながらため息をつく。

「でも治んないなぁ・・・・・・」

最初のめまいを覚えてかれこれ30分は経っている。

こんだけ長いといくらなんでも辛いんだよなぁ。

早く治んないかなぁ・・・・・・。

歩雪くんにも元気な姿でこないだのこと文句言ってやるんだから。

今宵はひそかに心に決め、症状が治まるのを待つことにした。

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