《MUMEI》 プロローグ「ただいまー」 無駄に広いマンションの部屋にむかって、声を出した。 奥から聞こえてくるマリオのヤッフーという声とともに、妹がうーいと声を出すのが聞こえた。 リビングをまがって、ドアを開ける。 鞄をベッドの上に置いて、すぐにPCを開く。 朝からスリープにしてあったので、すぐに起動した。 ホーム画面に、壁紙の家族写真が映ると、左のアイコンをダブルクリックした。 新着メール2通 『恭ちゃん、杏ちゃんへ 恭ちゃんも、杏ちゃんも、元気でやってますか? お母さんとお父さんは、お仕事がんばってるよ^^ 今年もあと二日になりました。今年もお正月、一緒に過ごせないです。ごめんね。 その代わりと言っては何だけど、ささやかな贈り物を送りました。 それは、お母さんとお父さんが一生懸命研究して作った一番最初の物です。 喧嘩しないようにちゃんと二つあるよ^^ 大切に使ってね!^^ いつでも二人の味方!!お母さんとお父さんより』 ささやかな贈り物?なんだそりゃ。 とりあうような貴重品なのか?まあいい。 「杏ー。メール―。」 「ちょっとまってー。今クッパ戦なんだよー」 リビングからは、ファイアボールを繰り出す音が聞こえる。 さて、先にもう一軒見るか、と、青白い画面に目を向けた。 『木佐森 恭介様 ご招待状 貴殿は ゲームに参加するに相応しい条件を揃えたため ゲームの参加権を この招待状に示します。 参加するかは、今ここで決めて下さい。 参加するかしないかはあなた次第です。 ゲーム開始時は、来年度元日19時からと致します。 このゲームは、この招待状が無い限り、参加することはできません。 また、このメールが通報されても、ゲーム開催が中止になったり、 主催者が捕まることはありません。なので、通報しても、何の意味もありません。 主催側からあなたへのメッセージ 自分の生きる世界を大いに楽しみたいと思うなら、参加しない方が君のためだ。 だが、この世界に退屈を覚えるのだったら、私たちと来るといい。 参加する of 参加しない 』 参加する of 参加しないのところにリンクが付いている… …迷惑メール?釣り? 個人情報も知られている… 「兄ちゃーん。メール見せてよー」 「おう」 両親からのメールに切り替える。 だが、そのメールの題名は隠せない。杏は、その題名を見て、眉をひそめた。 恭介に気づかれないように、すぐに両親からのメールに目を移す。 「贈り物ってなんだろうね。今年中には…届かないかな」 「届くだろ」 「二日で届く?いやいやいや」 「届くって」 ハッと気にして、黙った。 これはエンドレスに続く。 だから、黙って無駄な時間を取らないようにしている…のだが… ピンポーン 「はーい」 椅子から降りて玄関に向かう恭介を横目に、杏はサッと手をマウスに移す。 招待状に矢印を向けて、クリック。 玄関からは、業者と恭介が話しているのが聞こえた。 急げ! そこにでてきた内容―― 杏は短パンのポケットに手を突っ込み、オレンジ色の携帯を取り出す。 親指でメールのボタンを押す。そこにはマリオをやる前に届いた1件のメール。 「にいちゃんにも…」 ドアがバタンとしまる。 携帯をサッと短パンにしまいこみ、PC画面を両親からのメールに切り替えた。 「杏ー。これ、母さんと父さんからの届け物」 「はやっ。もう届いたんだ」 Xボタンをクリックしてウインドウを閉じ、画面を閉じる。 そのままリビングに駆け込んだ。 電気の消された恭介の部屋で、PCはカシャという音を静かに立て、眠りに就いた。 次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |