《MUMEI》 1恭介がカッターをギチギチと鳴らし、ガムテープの部分に切り込みを入れていく。 カッターをしまっているあいだに杏が箱を開けた。 中にはまた包装された箱。今度はプレゼントのようにリボンが巻かれている。 「なんだこれ。マトリョーシカか、おい」 ツッコミをしつつ恭介が箱を取り出して、リボンを丁寧にほどいていく。 杏が興味しんしんで箱を見つめている。 花柄の包装紙と赤いリボンを段ボール箱に突っ込んで、中に入っていたものをのぞきこむ。 「なんだこれー」 出てきたのは、結婚指輪でも入っていそうな感じの藍色の箱があった。でも、サイズはハガキぐらい。 杏が手を伸ばし、ふたを開ける。 「ますます何だかわからんくなってきた」 中にあったのは、クッションのうえにぽんと置かれた、二つの小瓶。 中にはオレンジ色の液体が入っている。どちらもひと口程度しか、入っていなかった。 ビンの下に、メモがあった。 「なになに…」 『恭ちゃん、杏ちゃん。 これが私たちの研究して作った水溶液(オレンジジュース味)だよ! 飲んでみてね!たぶん、おいしいはず。 でも、元日に飲んでね。 それより前でも、それ以降に飲んでも、ダメ。 もし、飲み忘れちゃったりしちゃった時は…中の液体を沸騰するまで 加熱して、それから捨ててね!』 「…(オレンジジュース味)って何だよ」 「私たちに妙な物を飲ませようとしてるのがまるわかり…」 「どうする?コレ」 「元日に飲む」 「それでいいの!?病気になるよ絶対!」 「母さんたちが飲めっていってんだから飲むだろ」 「私は飲まない!だからにいちゃんも飲むな!!」 …ハッ。 これもエンドレスパターン。 「とりあえず…これは正月まで触らない。いいね」 「はーい」 そうして杏は漫画を読みだし、恭介は自分の部屋にこもることにした。 …とみせかけて。 一人になると杏は携帯をだし、恭介はPCを起動させ、 インターネットを開く。 検索するキーワードは――― 『招待状』 前へ |次へ |
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