《MUMEI》

「ぐぎゅるるるおおぉぉ!」

酷い断末魔だ。少し眉間にしわを寄せて、腹部に渾身の四撃目を喰らわせる。

そして夜空を滑る様に鶏の周りを俊敏に飛び回る。十秒と経たずに撹乱させる目的を果たし、出来るだけ突然に鶏に体を向け、突進した。

しかし、鶏の目は確実に私を捕らえていた。

「きゃ…!」

今となっては言い訳だが、速度は遅くは無かった、筈だ。只、私の読みミスだ。鶏の力を甘く見ていた。とは言え、攻撃を受けたのは確かなので、次からは慎重にいかなければ…。

「もう…痛くないって言ったって驚くのよ、意外と。」

受けた攻撃は液体… 唾液だ。例によって物を溶かすそれは、私の服と皮膚を溶かした。勿論痛みや傷は無い。有るのはヒットポイントの減少と、剣の耐久値の変化だけだ。

耐久値とは、剣の余命を表す数値だ。余命といっても、数値がゼロになる前に砥石で刃を研げば、問題は無い。当然だが、コウガの余命は微量に変化しただけで、今すぐに焦る程の差ではない。

「当たりたく無かったなぁ…これ。まあ仕方無い…かっ…!」

独り言を呟いている最中でも、気にする様子もなく唾液攻撃を仕掛けてする。これだからプログラムは…と嘆息しながら、羽を使い最低限の身動きで避ける。

しかし、避けているだけでは進まないのが闘いだ。予想では、あと二、三撃を入れるか、大きいのを一撃入れるかすれば倒せる筈だ。

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