《MUMEI》
3
「ねーなんで生ハムのピザがないの!?」

「そりゃ注文してないからな」

「なんで注文しなかったの!?」

「じゃあお前が注文しろよ!」

「いつもご飯は兄ちゃんがやってくれるだろーが!」

「そんなに食べたきゃ自分で注文すりゃいーんだよ!」



…同時にピザにかぶりついた。


生ハムのピザについては置いとくことにして、
あの“ゲーム”が気になった。

いったいどのくらいの人に招待状が送られているのか――
また、どのくらいの人が参加するのだろうか。
そもそも、“条件”とはなんだ?

どんなゲームかも知らずに選択を迫られても困る…。

メールを無視したらどうなるんだろう。
どちらにも当てはまらず、無視されるのか。

それとも―――



「「いただきました。」」



二人はテーブルに頬杖をつきながらテレビに流れるニュースを見ていた。

そっかー。そろそろ選挙なんだなー。
相変わらずあの国はウザいんだなー。
あー、あの人死んじゃったんだ―。
へー、世界中で妙なメールが見つかってるんだ―。



「「えっ!?」」


「いったっ!」


二人同時に立ち上がり、その時に杏はテーブルに膝をぶつけてすっ転んだ。



「なぁ…杏…ちょっと携帯見せてみろ」

「…はい。」

メール…
「招待状」

「お前のとこにも来てたんだな…」

「そうだよ」

「…なんでお前は俺の事聞かないわけ!?」

「だって宅配の時みちゃったから」

「あっそ」

「…で、兄ちゃんは…参加するの?」

「俺は…まだわかんないな。どんなゲームかも知らないし。
 でもどうせパソコンとか携帯でできるゲームなんだろうよ」

「…私は参加しようと思ってる」

「お前にはマリオがいるじゃねえか」

「このゲームは…たぶんパソコンとかでやるものじゃないと思うんだ。
 兄ちゃん、気付かなかった? 
 このゲームの開催日時と、ママたちから届いた水溶液を飲む日。
 どっちも元日じゃん。」

「そんなの偶然に決まってんじゃん」

「そうかなー…」

「考えすぎだよ」

「私結構勘がいい方だと思うんだけどなー。」

「まぁ…勘がいいのは知ってるけど」

杏は携帯を恭介からとると、青白い画面を見つめる。
親指でボタンを押すと、『参加する』青く選択される。
中央の丸いボタンを押す。
インターネットが開かれ、何処かのサイトに移動する。

「おまえ、『参加する』の?」

「うん」

サークルがくるくると回り、開かれたそのページには、
『参加登録いたしました!会員番号3487 大晦日の午後6時、東京の赤いタワーの前で』という文字が現れた。

後ろからぬっと恭介が画面を覗く。

「登録するとこんな風になるんだなー」

「で。兄ちゃんはどうするの」

「…お前が変なのに巻き込まれたら困るからなぁ…。
 俺も参加することにするよ。」

「…兄ちゃん!」

「…勘違いすんな、母さんと父さんに文句言われんのが俺だからな…」

そう言って、恭介もまた、自分のPCを起動し、
『参加する』をクリックした。


 会員番号:3592

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