《MUMEI》
4
ー大晦日ー

「大晦日をこたつで過ごすことができないとは、、屈辱」

「ってことは年越し蕎麦やおせちが食べられないってこと!?」

「さぁ…。俺はそれより紅白歌合戦が…」

と呟きながら厚い上着を着て、マフラーを巻く。
外はもう雪景色。
それを一層美しく演出する背景は、摩天楼のビルたちが照らし出す
ぼんやりとした光の玉。

「よし、行くか…」

「ちょっと待って!ママたちから届いた奴持ってかないと!」

「やっべ忘れてた…」

恭介は家の中に飛び込んでドタバタと駆け回り始めたかと思うと、
無い!無い!と叫び始めた。

「何やってんのバカ兄ちゃん!!」

「だって本当にないんだよ!!」

「酷いよ!せっかくママたちが送ってくれたものなのに!!」

「俺の所為かよ!!…もういいだろ、飲み忘れて処分したってことで。
 遅れるからもう諦めよう」

玄関からゾンビの様な歩き方でおおきなためいきをついて出てきた。

杏は鍵をガチャリと占めると、恭介の肩をポンポンと叩いた。

「あ?」

「じゃじゃーん!!」

杏は自分のポシェットから「水溶液(オレンジジュース味)」を
だして恭介にドヤ顔で見せびらかした。

「お前…。俺を騙したな!?」

「兄ちゃんの慌ててる姿、すっごく面白かったよ!!」

杏がニヤニヤしながら箱をしまう。

「杏…お前なぁ…」

「さ、急がないと遅れちゃうよ!!」

「お前の所為だろ――――がぁぁぁぁぁ!!」

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