《MUMEI》
女装会長
「テメェーーー!制服はちゃんと着ろやァァァァァァ!!!!!!!」
「やべぇ!会長だッ!!!逃げろーーa」
その言葉と同時に、そこにいた生徒達は逃げ出す。けれどもそれよりも早く動いた者がいた。

綺麗な栗色の髪に大きな瞳。一般の高校生よりも少し小さい体躯。女装すれば女子にも見えそうな顔立ち。
彼の名は高千卯翔。この市立愀架高等学校の生徒会長である。
そんな翔は学校の除名を図るべく、毎週朝の登校時間に服装検査を実施している。
「こっち来んなーーーa」
逃げ叫ぶ不良達。
それを追う翔。
「だからボタンをキチンと閉めろーーa」
翔の怒声が響いた。
毎週のようにこんなことをしているせいで、生徒達の見せ物となっている為か、生徒達からは人気がある。

まだ続く鬼ごっこ。
その時、翔の体に手を回し抱き寄せる者がいた。
「おはよう。会長。」
朝が弱いのか何処か眠たげな声を翔の耳元で言葉を紡ぐ。
その声だけで翔の体がピクンッと疼く。
「藍兎………ッ!!」
翔が後ろを振り向くとそこには、中世の王子と身間違う程の美しさがあった。

物腰の柔らかそうな雰囲気、どんな深海よりも深く澄んだ青い瞳。灰がかった黒髪。スラリと伸びた手足に身長はモデルにも見える。各務藍兎はニッコリと笑った。

刹那、登校していた女子生徒達が黄色い悲鳴をあげる。
「藍兎様ーー!!」
「藍兎×翔さいこーーー!!」
などといった分けの分からない悲鳴をあげる。
「藍兎さん、いつもすいませんっ!!」
翔が拘束されている隙を逃さず逃げ出す生徒。
「あ、テメェら待て!!」
藍兎の拘束を逃れようとする翔だが余計強く抱き締められる。そして耳たぶをカプリと甘噛みされる。
「んっ!!」
「だめだよ翔?ご主人様が来たのに…。」
甘く囁く、その吐息が耳元で震える。
「それでも、あいつらを追うっていうなら“あの事”言っちゃうよ?」
瞬間、翔の体が凍りつく。
「分かったよっ、来いっ!」
拘束を解かれた俺は、藍兎の手をひき校内へとひぱった。


俺の秘密が藍兎に知れたのは2日前。

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