《MUMEI》
白い空間
「最初は何ていうか…煙りの様な、靄みたいな‥ハッキリしない白っぽい空間がいきなり現れたんだ。」

「それはいつ頃からだ?」
「井上が暴れ出した時位から‥かな。ほら、俺とお前とで取り押さえた時あったじゃん?」

「あぁ、あの時か…。」


井上の暴れる力が強すぎて、男二人で漸く押さえた時の事だ。


「その時からずっとソレが見えてたんだけど、大して気には止めてなかった。ただの霧か何かだろうって思ったから…。けど…」


余程恐ろしいものを見たのだろうか。
洋平は、相変わらず小さく丸まったまま、カタカタ震えている。

しかし司にもソレを聞く権利があるし、先が気になる。と同時に、やはり恐怖は感染していた。


「けど…何だよ……?」


聞き返す司の声までもが、微妙に震え出していた。


「その霧にさ、徐々に輪郭が出てきて…」

「女の人が現れたと?」

「うん…。」

「それってさ、何て言うか、その…心霊的なモノ‥なのかな…?」


司はそう言うと、チラリとベッドの方を見た。

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