《MUMEI》

「ふぁ〜。終わった〜!」

多少の疲労感に苛まれながら、剣を月光に当て、傷や欠けた場所が無いか等のチェックをする。

「よし、オッケー。異常無し。」

異常が無い事を確認し、静かに剣を収める。

シャリイイィィン

その軽快な音にやや笑みが溢れながらも、本来の目的を思い出し、下を見る。

月光で地面全体が照らされていて、よく見える。

カケルも、浮き出た魔方陣も。

巨大な杖を持つ魔物も。

「!」

どうやら私は相当に空中戦に集中していた様だ。地上に現れ出ていた巨大な魔物の存在感成るものや、雄叫びが聞こえ無かった様だ。

既にカケルは戦闘を開始していらしく、魔方陣は度々地表に映し出されている。

「…急がなきゃ……!」

降下の加速をするため、私はまだ慣れないながらも羽を極限に小さく折りたたむ。それでも魔力は集結しているので、細かな振動音は闇夜に鳴り響く。
風の抵抗に考えを施したところで、背後の翼が危なく消えかかっている事に気が付いた。
翼の所々が完全に透け、バランスを保てなくなってきた。私の体は空中で上下に激しく揺れて、すぐに斜めにゆっくりと降下していった。

「……き…。」

そして、アイテム《オープン・ラーニング》の効果が全て消え失せた。

「きゃあぁぁぁああぁ!」

私は絶叫をしながら、頭を下にして地面目掛けて急降下。冷静に成りきらない脳をフル回転させ、生き延びる道を精を尽くして探す。

しかし、所詮は冷静に成りきれていないので、全くといって良い程に考えが浮かばない。そんな中浮かんだ思いは、甘えにも近いものだった。


「助けてカケル!」


気が付いたら叫んでいた。

そして、同時に後悔した。

まだ地上まで五百メートル程もある。私は怖さで両手を口に当てていた。

だから聞こえない筈だ。

いや、そうであって欲しい。なぜなら、私は今、ゲームでも涙があるのか、と認識しているからである。つまり、私はゲーム内の怖さのあまり、涙している。

出来ればこの姿は絶対に見られたくない。

只、恥ずかしい。

だというのに、やはりというか。

地上まで二メートル、という所だろうか。灰色に身を包んだ少年が私の視界に登場した。

「大丈夫か?」

耳元の暖かな声を聞き、私は涙を一粒だけ零した。

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