《MUMEI》

次の瞬間、相手の身体が崩れる様に落ちていった
何事が起ったのか
流石の豊田も驚きその身体を受け止めてやれば、ひどく熱を帯びていた
少しばかり悪ふざけが過ぎてしまった、と
豊田は溜息つき相手の身体を横抱きにその場を後に
「……何、やってんだか」
ベッドへと横たえてやり、額に掛る前髪を指先で掻き上げてやる
その寝顔を覗き込んでやれば
発熱ゆえに朱を帯びている頬に、涙の後を見つけた
拭ってやれば相手はゆるり目を覚まし
そして、寝ぼけているのか豊田へと求める様に手を伸ばす
引き寄せられたかと思えば
「……僕を、好きなままでいて」
熱に浮かされた故のうわ言か、それとも本音か
それを知るすべは豊田にはない
だが相手の事情を知ればこそ、それは限りなく本音に近いのでは、と
自分なりに解釈し、その身体を抱き返してやり
落ち着けてやるため背を柔らかくなでてやるばかりだった……

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