《MUMEI》

アラハバキ族の詠唱が流れるにつれ大気が帯電し、頬のうぶ毛が逆立つのを虎ノ介は感じた。
上空では雷の予兆のような、ゴロゴロと言う音まで鳴りだしている。
この時代の多くの人々は、落雷を神の怒りと信じていた。
そのためか、大和王権側の兵士達の動揺がさらに高まるのを見て、虎ノ介はニヤリと笑う。
「オジジ!奴ら怯えているぞ!このまま西の地に逃げ帰ってくれれば、こちらの手間もはぶける!」
「む・・・・だが、そうもいくまい」
オジジの言葉どうり、いななく馬達とざわめく歩兵達の間に勇猛そうな者達の声が上がる。
「ええい!臆病者どもめ!腹をくくらぬかー!我ら三万の軍勢に対し、アラハバキどもは、女子供老人を含めわずか二千!!負ける道理があろうか!
神の護りがあるのはキ奴らだけでは無いぞー!!」

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