《MUMEI》 小鳥遊晶。「で、新くん。久美ちゃんを帰したってことは、あの話なんだよね?」 美鶴の表情が暗い。 多分、ミクちゃんへの罪悪感。 「ああ。これは全員に聞いておいてほしい。そして、これはボクらの命に関わる話だ」 響介と美鶴の表情が険しくなる。 「話が終わるまで質問は受け付けない。わかったな?」 二人は頷いた。 「それでは―――」 新斗が話そうとした瞬間、文化室の扉からノック音が耳に入った。 「………次はいったい誰だ」 出鼻を挫かれた新斗は、ムスッとしながら扉を開く。 そこにいたのは、またも女生徒で、髪は短く、ガタイが良く、いかにもスポーツをしているような女子だった。 「失礼します。ワタシは小鳥遊晶《たかなし あきら》と言います。あれ?三谷さんはもういないんですかー?」 「たか……なし?」 小鳥遊さんの質問に答えず、名前を反復する新斗。 「ああ、さっき帰ったばかりだぜ」 「あ、そうなんですかー。まぁいいです。ここに逆間久美さんはいますかー?」 ………またミクちゃんをご指名……か。 「ごめんねー。久美ちゃんも帰っちゃったんだ」 美鶴が申し訳なさそうに言った。 「え、じゃあ神名薫さんはいますかー?」 「え、神名は僕だけど」 ミクちゃんの次に僕を? 一体何の関係性が? 「実はですね………あ、っていうか、三谷さんがもう来てるんだったらもう知ってますよねー」 「やっぱり、それ関係か」 ため息を吐きながら新斗が言う。 「先程三谷奈津から情報もらった。別の情報があるのなら聞きたい」 「いえ、三谷さんと全く一緒の情報ですよー?」 「え?じゃあ君、何のためにここに?」 「本当は三谷さんと一緒に来る予定だったんですよー。ちょっとトイレ行ってる間にぴゅーんって行っちゃって。せっかちっていうか、時間を無駄にしたくないみたいです」 晶は恥じらうように頭を掻く。 「まぁいい。とりあえず口止めをしておく。………余計な仕事を………」 前へ |次へ |
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