《MUMEI》
逃亡者、山崎
静香はなぜ、姿を眩ませたんだろう?

そんな疑問もあったんだけど、深く考えなかったんだ

隣の県の、古びたアパート、
ここに、静香は居ると言う

佐久間のマトモな方をまとめてるそうだ

俺をこの街に戻し、街起こしをしてくのが、目的らしいけど

社に居る佐久間の者から、千夏が聞き出したらしいんだ

203号室か

部屋の明かりは消えてる…

どうするの?

待ってみるか…

ユイの問いに、そう答えたんだ

午後9時、女の人影が、アパートの外階段を上がってた

203号室のドアを開けてる

帰ってきたね

ユイの言葉を聞きながら、異変を感じ取ったんだ

ユイ、車から降りるなよ

はい!

ユイもわかったみたいだ

男の影が階段をかけ上がってたんだ

どう見ても、狙われてるようにしか見えなかったよ!

俺が階段を上がると、ドアは閉められてた

鍵が掛けられてる

ドアを叩いた

返事がない

そんなわけはない、今帰宅したろうが!

ドカンドカン、ドアを蹴ったんだ

隣の住人が何事だと顔を出してた

悪いけど、部屋上がらせてね

お、おい、お前何だよ!
警察呼ぶぞ!

呼んでくれ

隣の部屋に土足で上がり込み、窓からペランダヘ
そして、203号室にベランダから行ったんだ

鉢植えがあった

それをぶん投げて、窓ガラスを割ったんだ

鍵を開け、サッシを開いたとたん、カーテン越しに何かが来た!

ナイフだ!

渾身の右拳を振り抜いた
暗い部屋だけど、手応えはあったんだ

逃走する気配

玄関から逃げるつもりだな

深追いする必要はねーな……

部屋の明かりを点けたんだ

……タクヤさん?!

……静香さん……刺されたのか?

足を押さえてた、血が、溢れてる

パトカーの音がしてる

警察官が来た

救急車を呼べ!

事態を飲み込めてない警察官に、さらに怒鳴った

怪我人が見えねーのか?!

素人が、タオルで縛っただけだ

血が止まってない

この方は、佐久間タクヤさんです、
暴漢は逃げていきました
私の名前は、佐久間静香です

警察官に、そう話した静香だったんだ



前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫