《MUMEI》
悪夢の物語。
新斗は晶にミクちゃんの事を話し、口止めをさせた。
晶は驚いたようだったけど、2年前の事件に直接関わっていない彼女には、それだけだった。
「じゃあアタシは帰ります。本当に、気をつけて下さいね」
最後に念を押し、晶は去った。
「………はぁ」
新斗がため息を零す。
「また来訪者が来るかもな」
響介が笑いながら言う。
「冗談じゃない。もう面倒を掛けられるか!」
「響くん、茶化さない。で、話ってなに?気をつけてって、どういう意味?」
「ああ、全て話す。恐らく、ボクも帰ったら父さんからその話をされるだろうしな」
新斗は話した。
三谷奈津からもらった情報を一語一句違わずに。
二人は衝撃を受けていた。
当たり前だ。
命を狙われるなんて、生きている間に数回も無いはずだ。
しかも、僕らはまだ中学生なのに。
2年前にあんな事件が無かったら………そう思う時もある。
ミクちゃんだって記憶を失うことはなかったし、『俺』だって現れることはなかった。
この空白の2年間に、楽しかった思い出が詰まっていたかもしれない。
しかし、これはもう、過去の話だ。
終わってしまった話だ。
もう一度やり直すことは、不可能だ。
次は救いたい。
みんなを………。
ミクちゃんを………。






こうしてまた、悪夢の物語が始まった。

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