《MUMEI》

日向が入って来た扉から現れたのは、スーツ姿の女性とそれに恐々と着いてくる近隣高校の制服を着た少女だった。
女性は少女を部屋に入れると一礼して去って行った。
残された少女はチラチラと日向に目を向けつつ立っていた。
「光さん、こちらに掛けて下さい」
アリシアは日向の対面のソファーに座ると、自分の隣の座面をポンポンと叩き少女を呼んだ。
少女は小走り気味にやって来て座る。
「紹介します
こちらは萩原光さんです
特異点発生時の生き残りで、つい昨日魔力が発現したばかりです
…こっちの冴えない男は日向一さんです
こう見えてベテランなので、頼ってあげて下さいね」
「お前は一言余計なんだよ!」
「大声を出さないで下さい
光さんが怯えているではありませんか」
光はキョトンとした表情で日向たちのやり取りを見ていた。
「嘘つけ!
全く堪えてねぇよ!」
「そうですか」
「埒が明かねぇ
…光、行くぞ」
「え…」
立ち上がった日向は光の手を牽いて執務室を出て行った。
「仲良くして下さいね〜」
去って行く2人を見守るアリシア。
2人がエレベーターに乗ったのを確認した後、
アリシアは自分の右手を見た。
「…今の私の手も、握ってくれるでしょうか?」
広い執務室の中、アリシアはまた溜め息をついた。

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