《MUMEI》
響介の決意。
薫と新斗が帰ってから暫く経って、オレと美鶴も文化室を出た。
オレが自転車を押して、隣には美鶴。
「響くん。剣道部、充実してる?」
美鶴が尋ねる。
「ん、まあ明日葉の剣道部はちょっと人数足りなくて物足りないけどな。クラブでも結構楽しいぜ」
「そっか」
ずっとこんな調子だ。
オレが聞きたい事あるっつったのに、言葉が出てこない。
さすがに心のダメージが大きいのか、美鶴は俯いたきりだ。
いや……オレも、か。
この先が不安で、こんな時に本当にこんなこと聞いてしまっていいのか?
そして、言ってしまっていいのか?
オレは天草美鶴のことを好きだってことを。
……いや、ダメだ。言えない。そんなこと言えるわけがない。
守らなきゃ。
せめて、美鶴を守る。
あの日久美が拉致られてから2年。
久美だけじゃない。みんなバラバラになって、美鶴とも距離を置かなくちゃいけなくなって……。
今回はオレ達5人、全員が標的なんだ。
オレは……美鶴を守る……!

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫